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Simple is the BestAQBインプラントシステム

■ シンプルインプラント講座 第7回
 連続紙上講座【シンプルインプラント講座】第7回目は、「ソケットリフトにおける手術操作性の良さ」で1ピースAQBの優位性をお伝えします。 今回もシンプルインプラントの提唱者のお一人、杵渕孝雄先生に臨床上のヒントを交えながら論じていただきます。


杵渕歯科医院院長 杵渕孝雄先生 

 1ピースの優位性についてこれまで左の通りに述べてきた。今回は「ソケットリフトにおける手術操作性の良さ」というテーマで1ピースAQBの優位性を論じることにする。

1.上顎洞底挙上術とは
 上顎洞底挙上術とは、上顎洞粘膜を洞底部から剥離挙上してつくられた空隙に、自家骨や骨補填剤を填塞して上顎洞底部の骨量を増大させる手術であり、上顎臼歯部領域におけるインプラントの適応を拡大するためのテクニックである。 この手術に対する名称の統一はなく、sinus lift、sinu slift graft、sinus elevation、上顎洞底挙上術, 上顎洞底骨造成術などの用語が用いられている。 上顎臼歯部の適応症拡大において、上顎洞底挙上術は今や欠かせない存在となっている。
 術式としては、上顎洞側壁に窓を開けるLateral Window Technique(いわゆるサイナスリフト術)と、形成したインプラント窩からオステオトームで1歯単位で洞底骨皮質を槌打挙上して植立する (オステオトームによるソケットリフト法)術式が従来から行われていた。 しかし、Dr.Cosciの開発したSinus Lifting Drill Kittや筆者が第6回IAI学術大会で発表した3mm用と4mm用の試適ガイドを洞底粘膜の剥離挙上で剥離子代わりに使用しながら、5mm用のスパイラルドリルで洞底皮質骨を貫通し、 bicortical anchorage で植立させ初期固定を強化する術式など、ドリルによるソケットリフト術も行われているのが現状であると思う。 また、チタン系インプラントでは剥離挙上した部分には自家骨や骨補填剤を填塞するのが一般的である。


2.サイナスリフトとソケットリフトの適応症
 サイナスリフトの各種術式の適応症では、上顎洞形態が犬歯部から上顎結節部までフラットに広い範囲で垂れ下がっている場合は側壁開洞によるサイナスリフト術、上顎洞が第1大臼歯相当部に向かって垂れ下がるように比較的狭い範囲で下がっている場合はオステオトームまたはドリルによるソケットリフト術ということになっている。 また、洞底までの骨高径が4 ~5mm以上あって、初期固定が得られる場合は、洞底挙上術とインプラントの同時植立(simultaneous approach) を、洞底までの骨高径が3mm以下で初期固定が得られない場合は、洞底挙上術のみ行い、後日インプラントを植立する遅延植立(stagedapproach)の適応症になっている。
 しかし、遅延植立の場合、2回の手術となることや、1回目の洞底挙上術で挙上部に填塞した骨が徐々に吸収して目減りする傾向があることなどのため骨高径が少なく、多少初期固定が甘くても同時植立をする傾向にある。 すなわち側壁開洞のサイナスリフトで、初期固定が得られないくらいに骨高径が少なく、かつ洞底挙上術中に洞底粘膜に穿孔、裂開が生じた場合くらいが、遅延植立の適応となっているのが現状かもしれない。
サイナスリフトの各種術式


??)図はUltimate Guide IMPLANT S,山崎長郎ら編集, 2004 年, 医歯薬出版 より引用

?)試適ガイドによる剥離挙上でドリル貫通するソケットリフト法(杵渕)オステオトームによる槌打では、上顎洞底部の骨皮

質が不規則な割れ方になるため、初期固定が得にくい可能性がある。 そこで私は3mm 用と4mm用の試適ガイドで段階的に洞底粘膜を剥離挙上しておき、最後に5mm 用スパイラルドリルで洞底皮質骨をオーバーランしないように注意しながら貫通するというシステムを開発した。 ツールセットのみを使用する簡便なシステムで、研修会なども実施しているためユーザーが少なからずいるものと思われる。 ただし、洞底粘膜にテンションがかかったり、粘膜が特別に薄くかつ脆かったりすると、剥離挙上の途中で穿孔や裂開が生じることもあり、その場合は植立直前までインプラント窩の形成を完了してから、1ヵ月後の植立を予定して顎堤粘膜を縫合閉鎖する。 患者さんに予めよくその主旨を説明しておく事が重要。1ヵ月後の植立時は、形成したインプラント窩の中に発育した線維性結合組織ごと洞底粘膜を挙上すると洞底粘膜の穿孔や裂開は起きにくい。


3.AQB でのLateral Window Technique(いわゆるサイナスリフト術)
 前述したように上顎洞までの骨高径が3~4mmを境に初期固定が得られるか否かの境界となっているが、実際はインプラントの種類、チタン系かHA系か、 1ピースか2ピースか、また術者の技量などで大きく異なる。
 一般にサイナスリフト部にはチタン系のインプラントよりHA系のものが向いているといわれている。その意味では、純度の高い再結晶化HAでコーティングされたAQBインプラントは優位性が高い。 またチタン系では自家骨や骨補填剤を填塞する必要があるが、AQBなどHA系では途中で採取できた細片骨があればそれを填塞すればよい程度で、もし、なくても自然の血餅があればテント状に挙上した上顎洞粘膜と洞底骨の間に骨新生がみられることは多くの臨床例で確認されている。
 また、サイナスリフト術を行うような臼歯部においては、角度付きアバットメントの必要性は少ないと思われ、また余程初期固定が良くない限り、2ピースの場合はマルチアバットメントを除去したり、ヒーリングキャップを取り付けたりする最中に初期固定が緩んだりしやすい。 そのため、側壁開洞サイナスリフトの同時植立では1ピースの方が操作性が優れていると思われる。
 遅延植立の頻度は少ないと思われるが、増生した骨に初期固定させるわけで、手術回数を減らすという意味や、手術操作中に緩まないよう最小限のトルク操作で済ませるという意味からも1ピースが優れている。

4.AQBをソケットリフト術で植立する場合
 口腔外科やインプラントのスペシャリスト以外の大部分のGPインプラントロジストは、手術侵襲の大きなサイナスリフトや骨増生術にチャレンジするより、手術侵襲の少ないソケットリフトなどを選択した方が無難であると思っている。 萎縮診療と誤解されるかもしれないが、ソケットリフト後のX線像を観察していると、インプラントを支えるのに必要な骨がテントを張ったように形成されている例が多く見られるため、わざわざ洞底粘膜の穿孔裂開や術後感染などのリスクを犯して手術侵襲の大きいサイナスリフト術を実施しなくてもよいのではないかと思ってしまうからである。 同じ効果を、侵襲の少ない手術で済ませられるのであればそれに越したことはない。 すなわちソケットリフトを第一選択とし、上顎洞形態から明らかにサイナスリフトの適応症である場合や、ソケットリフトでどうしても上手くいかない場合にサイナスリフトを行うのがいいと思って私自身実践している。 また、HA系の中でも骨伝導性の強いAQBはソケットリフト時、他のインプラントと違い、自家骨や骨補填剤を必要としないという利点がある。 これは骨採取という第二の手術侵襲を必要としないわけで、上顎洞底挙上術の中で最も侵襲の少ない理想的なインプラント植立術だと思っている。
 オステオトーム法にしろドリル法にしろ、通常の植立でなくソケットリフトで植立する必要があるということは、洞底までの骨高径が少ない症例である。 上顎は下顎と異なり、海綿骨の占める割合が大きく、顎骨表層の皮質骨も頼りにならず、洞底皮質骨が初期固定にとって最も頼りになる存在であることは間違いない。 サイナスリフト術の場合も記述したが、よほど初期固定が良くない限り、2ピースの場合、マルチアバットメントを除去したり、ヒーリングキャップを取り付けたりする手術操作中、初期固定が緩んだりしやすい。 サイナスリフトに比べて手術侵襲の少ないソケットリフトを選択したからには、後日開窓手術を要する2ピースではなく1ピースの選択が理にかなっている。
 実際、骨高径が3mm以下では、まともな初期固定は期待できないことが多い。 無理に2ピースを埋入しようとして、剥離した洞底粘膜と洞底骨の間にフィクスチャ-を押し込んでしまったり、洞底粘膜に穿孔や裂開があった場合など、上顎洞にフィクスチャ-が迷入してしまうこともある。 骨での初期固定が期待できない場合は、むしろ口腔内に露出した支台部で即時連結固定をして、骨癒合の促進を図ると割り切って考えた方がよいと思う。 その場合、すでに近傍に植立したAQBがあると、強力な固定源となって、連結レジン冠やBrで連結固定できるという安心感がある。 私は植立直後、初期固定の悪いAQBがある場合、隣接歯あるいは隣接AQBを研磨用槍状ダイヤモンドポイントで表面をつや消しにした後、CR充填用ボンディング剤(光重合)と即重レジンの筆積み法での即時連結固定を行い、極めて有効な結果を得ている。
 私の工夫しているドリル貫通式ソケットリフト法の詳しい術式や注意点に関しては、紙面の都合上割愛したが、詳しくは第6回IAI 学術大会の後抄録集をもとにアドバンスの作成した小冊子(研修会時使用)や、東京医科歯科大学歯科同窓会学術部主催のCDE実習コース(卒後研修)を参照して欲しい。 さて、次回は「直径3mmAQBという1ピースにしかない選択肢」というテーマで述べてみようと思う。
ソケットリフト時穿孔で遅延植立での対応症例
洞底粘膜の剥離挙上中、穿孔や裂開が生じることもあり、その場合は植立直前までインプラント窩の形成を完了してから、1ヵ月後の植立を予定して顎堤粘膜を縫合閉鎖する。 左上7は穿孔後の植立例約6年後であるが、インプラントを支えるのに必要な骨がテントを張ったように形成されている。
上顎洞形態によるソケットリフトとサイナスリフトの選択基準 ソケットリフトにおける1ピースAQBインプラントの利点

・純度の高いHA系であるため自家骨や骨補填剤が不要
・支台部分があるため手術操作は2ピースより容易
・初期固定の難しそうな薄い骨でも支台部分で即時連結固定が容易

杵渕孝雄先生
東京医科歯科大学歯学部卒業。歯学博士。三井記念病院歯科・歯科口腔外科科長、などを経て、現在、杵渕歯科医院 院長。

 
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